子ども期のトラウマと
複雑性PTSD
当事者が考える回復へのプロセス
はじめに
わたしのこと
はじめまして
"へなへな もへじ"と申します。
私は子どもの頃に親から虐待やネグレクトを受け、ヤングケアラーとして育ちました。
30歳を目前に親と絶縁し、自分の人生を歩み始めたものの、子育てをきっかけに過去のトラウマに苦しむようになり、複雑性PTSDを発症しました。
トラウマのフラッシュバックにより通常の生活が送れず、仕事を続けることも難しくなって、最終的には職を失いました。
親と決別して、自分だけの新しい人生を始めようとしたのに、過去の出来事に結局は苦しめられるようになってしまった…当時の私は絶望していました。
しかし、家族の理解と励ましのおかげで、今はこうして文章を書けるまでに回復することができました。
このページでは、当事者の視点から
「子どもの頃のトラウマ体験がその後の人生に大きな影響を与える」
という問題について、私自身の経験と取り組んできたことを共有したいと思っています。
当事者として、私には3つの目標があります。
- 同じ苦しみを抱える当事者とつながること。(支援ではなく、一緒に考える)
- 現在の子どもたちを逆境体験から守り、将来世代への負の連鎖を断ち切ること。
- 多くの人にACEs(子ども期の逆境体験)について知ってもらうこと。
これらの目標を達成するためには、子育てのあり方から働き方まで、社会全体の問題に取り組む必要があります。
このサイトは、そのための一歩です。
私は、当事者どうしで助け合うことができれば、この問題に立ち向かえるのではないかと考えています。
当サイトを開設してから、予想をはるかに超える多くの方々から、体験談や悩み、そして具体的な相談をいただいています。
お寄せいただいた内容をもとに、活動内容を少しずつ具体化していきたいと考えているところです。
ご自身の体験談、あるいは当サイトに対するご感想やご意見、ご批判をお待ちしております。
【略歴】
幼少期から高校生まで、母からの虐待やネグレクト、不登校、ヤングケアラー、などを体験。
両親の離婚後は、母の交際相手からの暴力や嫌がらせなどを受けて育つ。
生い立ちを挽回しようと大学に進学するものの、学費のための奨学金と貯金を母に私的に使用されてしまい、学費未納で退学処分寸前に。
これを機に実家を離れ、のちに母と絶縁する。
生い立ちを挽回したい一心でさらに勉学を続け、博士(理学)を取得。
結婚して子どもを授かるが、育児中に感情が非常に不安定になる(のちに、複雑性PTSDのフラッシュバックであったことがわかる)。
育児にも家事にも関われなくなったことから、妻との関係が悪化。
そんな中、勤務中に突然、思考が停止してしまい、全く仕事ができなくなる。
適応障害と診断され休職するも、回復できずに退職。
その後、過去の生い立ちがトラウマとなっていることや、複雑性PTSDを発症していることが判明。
一般財団法人TICC TIサポーター、TIコーディネーター養成講座修了(2023年10月)
ACEsの苦しみから解放されるために
私は子どもの頃、虐待、ネグレクト、両親の離婚、ヤングケアラー、極貧での生活などを経験しました。
このような体験はACEs(Adverse Childhood Experiences)と呼ばれ、子どもの時だけでなく、成人後も複雑性PTSDなどの精神疾病や社会的不利に苦しむ原因となります。
しかし、ACEsについての認知度は低く、予防の取り組みも十分に進んでいません。
私が「ACEsを減らしたい」と強く願う理由は、「子ども時代の逆境がその後の長い人生を苦しめる」からです。
子どもは苦しむために生まれてくるわけではありません。
大人の不適切な行動が子どもの人生を一変させてしまうのは、あまりにも不公平です。
逆境を乗り越えたほうが強くなると考える人もいますが、ACEsに関してはそれは間違いです。
日々の虐待に耐えることは逆境を乗り越えることとは違います。
子どもは虐待に「耐えている」のではなく、ただ「されるがまま」になっているだけです。
逆境に溺れる子どもは、感覚や感情を失い、逃げるという発想すらなくなります。
その結果、自己否定と対人恐怖に陥り、少しのストレスにも耐えられない大人になってしまうのです。
そのようなACEsサバイバーに対して「自己責任だ。強くなるために努力しろ。」と言うのは酷です。
子どもは親を選ぶことができません。偶然生まれ育った環境によって不利を被り、それによって一生苦しむのは理不尽です。
しかし、周囲の人からの支えがあれば状況は変わります。
大人になってからでも、人生の軌道修正は可能です。
私自身、そのことを経験しました。
回復のためのステップ
1. 症状を理解する
ACEsがどのような悪影響をもたらすのかを理解しましょう。
「過酷な環境を生き抜くために身についた習性が、今のあなたを苦しめている」ことを知ることが大切です。
2. 生い立ちを整理する
過去の辛い出来事が今の状態にどう影響しているかを振り返ります。
辛い感情が蘇ることもあるので、専門家の力を借りながら、ゆっくり無理せず行いましょう。
3. 自分の心を育てる
子どものときにストップしてしまった心の発達を再開させます。
自分の心を発達させるために、信頼できる人のサポートを得ることが重要です。
対人恐怖等により、誰にも話をできない場合は、私がメールでお話を伺うこともできます。
お問い合わせフォームからご連絡ください。
とにかく辛い状況を誰かに聞いてもらい、理解してもらうことが、回復への一歩になります。
4. 回復する
支えてくれる人がいる安全な状況で、自分の心を育て直すことで、少しずつ回復していきます。
自分と丁寧に向き合いながら過ごす中で、以前よりも生きやすくなったことが実感できると思います。
回復への一歩になりますように
ACEsを経験した人は、そうでない人に比べると、人生で多くの困難に直面すると思います。
その困難によって、さらに逆境に追い込まれることもあります(私がそうであったように)。
ですが、適切な情報を得て、きちんと自分の状況と向き合っていければ、困難を小さくしていくことが可能です。
このサイトが、同じ苦しみを抱える方の助けになることを、心から願っています。